自らの意思表示を事前に明確に行う必要性
自分の身体・自分の命・自分の希望
医療の進歩は着実で目覚ましいものがありますが、人は誰しも老いと死からは逃れることができません。人が病を得た時、自分の身体や命をどのように取り扱って欲しいのかを前もって、医師や看護師はもちろんのこと周囲の人間に明確に意思表示しておく必要があります。『負担の大きい手術を回避して痛みだけを取ってほしい』『痛みは我慢するので思考判断をはっきりさせたいので麻薬の使用は控えたい』『寝たきり状態になるのは絶対避けたい』など、人それぞれ状況に応じてその時々の希望は異なります。また、提供可能な医療というものによっても選択肢の幅が異なってくるでしょう。
自分はどうしたいのか? 私たちは医師から提示された治療の選択肢を参考にしながら決定しなくてはなりません。しかし、切迫した状況であり自分自身が意思表示できない(意識不明や意識混濁)ような状況では、別の誰(なに)かに意思表示を行ってもらう必要があります。また、病に対峙する自分にどのような治療が行われているのかを共に寄り添って理解し、医療機関や医師からの説明を受け経済的な収支バランスをも考慮し、自らの希望を斟酌した上で最良の選択ができるようアドバイスしてくれる存在も必要となってくるでしょう。
医療機関や医師・看護師の方々は自らの病と一緒に戦ってくれるパートナーですが、同時に自らの治療に対して重大な責任を有しています。そのため、医療過誤や事故などが発生した場合には対立関係に陥ります。また、自らの治療に対する希望と医師の方針に齟齬があり、希望と異なる治療が隠れて行われるようなこともないとは言えません。そこで、医療機関や医師とは別の立場の支援者をつくる必要もあります。
医療機関や医師・看護師の責任や立場も考慮
医療機関や医師は『人の命』という何ものにも代えられない大切なものを預かる立場であるため、重大な責任を負っています。患者の希望を無視して治療を行うことも当然できませんし、細心の注意を払って治療を行っても治癒に繋がらず患者や患者の家族から訴えられることもあります。医師の技量不足や不注意、怠慢などによって生じた事故については当然責任を負わなくてはなりませんが、その役目の性質上、患者やその家族とのコミュニケーション不足によって生じる、不要なリスクを背負わされることも少なくありません。
コミュニケーションとは互いの意思や希望、方針の交換です。コミュニケーションに問題がある場合、一方的に片方だけに問題があるというのは滅多にありません。良好なコミュニケーションを成立させるためには、患者である我々にもそれを実現させる努力が必要です。その第一歩こそが自らの希望や意思をハッキリと明確に伝えることです。
患者である自らがその治療法をリスクを承知の上選択し医師が全力で治療に当たったとしても、不幸な結果となる場合もあります。この時の責任が患者には一切なく全て医師にあるとしたならば、誰も医師になろうとはしないでしょう。リスクを承知で選択した時点で、患者である自分にも責任があるということをハッキリと認識し、万一不幸な結果となってもそれを受け入れるという患者の覚悟が明確になってこそ、医師は余計な心配をせずに全力で治療や手術に向かっていくことができます。
正当な患者の権利や責任、正当な医師の権利や責任を正しく担保し、患者となる皆様が安心して治療や手術を受けられる環境づくりを、ココ・ガーディは全力でサポートします。
尊厳死宣言公正証書で自分も安心!周囲も助かります
現在の医療では回復が望めない状況での延命治療を拒否する方が増えています。何本ものチューブに繋がれベッドに寝たきりでいるよりは、人間としての尊厳を保ったまま死を迎えたいと思う方が増えており、それを主治医などに元気なうちに意思表示される方もいらっしゃいます。
しかし、医師はある日の会話だけを根拠に軽々に延命治療の中止を行うことはできません。この装置を外せば次の瞬間目の前の患者は死ぬと熟知している主治医がそれを行えば、殺人罪に問われる恐れがあるからです。その医師がどれだけ裁判所で「そう頼まれていた」と訴えてもそれを裏付けるものは何もありません。
そこで、私達が尊厳死を望む場合には、医師や周囲の人間に負担をかけずに済むように段取りを行わなくてはなりません。遺言に『延命治療を拒否する』と書いた方も過去にはいらっしゃいましたが、遺言は本人が死亡してはじめて効力を有するものですから、病院のベッドに横たわって生存している自分には何の役にも立ちません。医師の立場や責任問題回避を担保し尊厳死を希望する場合には、『尊厳死宣言公正証書』の作成が有効です。
尊厳死宣言公正証書は遺言公正証書と同様、公証人の手によって作成されるもので強力な証明力を有します。そのため、意識不明の状態で意思表示ができない自分に代わって自らの尊厳死を希望する意思を伝えられるだけでなく、自らの意思を尊重し自らの尊厳死の実現を手助けしてくれた医師や看護師、周囲の人間の立場を担保する役割を果たします。

